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「見てください」
映画「点の記」の撮影スタッフの記録「剣岳、撮影の記」の掲示板の記載に誘われて、新宿三丁目近く「バルト9」(丸井の9F〜14Fにあるシネマで1日1回放映)に出かけてみた。封切りの時に「点の記」を見せていただいたが、素晴らしいのだが何かがしっくりこない状態でシネマを出てきたのを記憶していたからだ。それが本日わかったような気がした。日本屈指の山岳地帯の峻厳で神々しいほどの風景は、どんな名優をおいても小さく見せてしまう自然の大きさであり厳かさの存在ではなかろうか。それでなまじ山をかじっている私は余計に自然の方に目が行き「点の記」の主題の方から目がそれてしまったのかも知れない。今回「撮影の記」を見て、木下大作監督の思い入れに接し、情熱と使命感というかある種の死に場所探しに憑かれた姿に感動を覚えたのだ。平地での撮影が主な山の素人スタッフが、覚悟はしていてもまだどこかに安易な気持ちがあった初期のころから、重い機材を担いで山谷を越えながら、やがて山男そのものに変っていく姿に涙される。天候に左右され心の葛藤を余儀なくされている監督が、怒り、どなり、笑わせ、それでも追及の手を緩めず、全員を同一方向に統率していく責任感には熱いものが感じられる。主人公の柴崎役の浅野忠信さん、長次郎役の香川照之さんも撮影が進むうちに山男化していき、たくましく俳優・スタッフの垣根を越えて監督のアシストをしていく。まさにそれは同じ釜の飯を食う一蓮托生の山仲間の世界に自然に没入していったからにほかならないのではないか。中村さんがこの地域は白い地図のままでもよかったのにと言っていたが当時の苦労を思えば確かにそう思う。しかし、それでも机上でしか物を考えぬ陸軍上層部の思惑とは離れ、測量官の方々は黙々と淡々と自然に許される限りの範囲で任務を全うして行く。その姿が撮影作業を通して、この木下監督そして俳優の皆さん、スタッフの姿といつの間にかかぶさって、自分の中ではこの「撮影の記」が「点の記」にさえ思えてきてしまった。木下監督にはすまないが「点の記」は出来上がった地図のような存在であり、この二作品が合わさって始めて「点の記」の完成品のように私には思えてならない。すみません。それにつけても好きな剣岳周辺もふんだんに見られてうれしい限りでした。会員の皆さんも時間が許せる方には是非お勧めしたいと考えます。
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